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散瞳型眼底カメラ

無散瞳型眼底カメラ


散瞳型眼底カメラ

眼底検査の方法

 眼底カメラによる眼底写真撮影による。理由は所見の客観性、再現性、保管性の諸点において直像検眼鏡検査にまさっているからである。

使用機器

 使用機器は大型眼底カメラの使用を原則とする。使用機器名は記録しておく。
 機器設置場所は暗幕で暗くする程度でよく、暗室は必要ではない。機器操作が便利におこなえる程度の空間は必要である。

使用フィルム

 使用フィルムは原則としてスライド用カラーフィルムとする。
 理由はモノクロームは経済的ではあるが、現像に要する技術、時間並びに現像成績が眼底像の読影におよぼす影響などを考えたためである。
 しかし特殊の目的のためのモノクロームフィルムの使用を妨げないのはいうまでもない。

撮影者

 撮影者は一定の撮影手技を習得し、ばらつきの少ない安定した一定の技術水準にあるものとする。1日撮影可能の人数は、撮影者の疲労などを考慮に入れて1日実働6時間とみて、およそ100名以内を可とする。

被撮影者

 撮影は右眼に対しておこなうのを原則とする。撮影前に散瞳剤を次の要領で点眼するが、点眼に先立ち、副作用などによる事故防止のため、あらかじめ問診表などによって点眼禁忌者の発見につとめる。

散瞳剤点眼禁忌者の発見と事故の防止

 絶対的禁忌とすべきは緑内障、相対的禁忌は白内障、反対側の失明もしくは角膜混濁、流行性角結膜炎などである。
 まず問診すべき事項は、上にあげた眼科疾患罹患の有無、緑内障罹患の有無についての家族歴、虹暈視の有無(たとえば『夜、明るい電球のまわりに虹のような光の輪が見えることがありますか』と質問する)とする。事前に診療圏内の眼科医に禁忌疾患があれば、その氏名を問い合わせておくことがよい。
 白内障などの視力障害者を相対的禁忌とするのは点眼によって危険はないが、片方の眼がかすんでよく見えないとき、反対側の健眼を散瞳すると、4〜5時間くらい両眼ともかすんで、歩行、作業が不自由になるので避けるわけである。同様の理由で、車両の運転者の場合、充分見え方が回復してから運転するようにする。
 流行性角結膜炎(いわゆる「はやり目」)の場合は、点眼によって周囲の者に伝染させるおそれがあるからである。

散瞳剤

 散瞳剤は10〜15分以内に効果が期待できる薬品が望ましい。たとえば、トロパ酸-N-エチル-N-γピコリルアミドと塩酸フェニルフリン合剤(市販名ミドリン-P)

点眼についての注意事項

●点眼についての注意事項と点眼の目的をよく説明する。
・点眼の前に点眼者は手指を消毒する。
・点眼瓶内の薬液が所定の散瞳剤であることを確認する。
・瓶の先端が睫毛ならびに眼瞼に触れないように注意する。
・万一の事故にそなえて1%ピロカルピン、ダイアモックス等の救急薬品を準備すること。
 また、最寄の眼科医の電話番号等を記録しておくこと。
・事故防止のため散瞳剤は担当者が保管し、空き瓶に他の薬剤等を入れることを禁ずる。

●散大瞳孔の大きさ
・散大瞳孔の大きさは縦径7o以上を可とする。

撮影部位

 撮影部位は画角30度のカメラで右眼について次の3もしくは4枚撮影を原則とする。

 T)乳頭部位 U)上耳側動静脈部位 V)下耳側動静脈部位 W)黄斑、乳頭を両端におさめた部位の4枚、もしくは、T)、U)およびV)に横斑部を含めた3枚撮影を原則とし、上耳、下耳はそれぞれ5乳頭径、鼻側は2乳頭径の範囲をおさめるものとする。

撮影後の縮瞳剤点眼

 自然に放置しておいても4〜5時間後には視機能はまったく回復するが、要すれば1%ピロカルピンなどの縮瞳剤を点眼する。ただし、縮瞳剤の保管その他のとりあつかいに注意を要することは散瞳剤の場合と同様である。


無散瞳型眼底カメラ

眼底カメラの設置場所(撮影用暗室)について

 無散瞳眼底カメラを設置する暗室は常時10名程度の被験者が待機できる広さと“かろうじて新聞の見出しの文字が読める程度”の暗さが必要である。また暗室内には被験者を誘導するための介助者をおくことが望ましい。

撮影部位と撮影枚数

 スライド用カラーフィルムにより両眼を各1枚計2枚の撮影を原則とする(注1)。撮影画角45度(約7.5乳頭径)のカメラで視神経乳頭と黄斑中心窩をむすんだ線の中央を中心として撮影する。この場合正視眼では乳頭の耳側5乳頭径以上、鼻側1乳頭径以上の範囲が撮影される。

1日の被験者数

 集団検診では1日実働6時間として約100名の両眼撮影が可能である。撮影担当者の習熟度と高齢被験者数を考慮してカメラ1台につき1日60〜100名の範囲で検診計画をたてるのが適当である。

両眼撮影の方法

 片方の眼を撮影してから反対側の眼を撮影するまでの待ち時間はおよそ5〜10分である。集団検診で能率よく両眼撮影をおこなうには被験者を5〜6名ずつの小グループに分けて、最初にグループ全員の右眼だけを順次撮影し(撮影の終了した者は、そのまま暗室内で待たせておく)次に右眼と同様の順番で全員の左眼を撮影するとよい。

高齢者の撮影

 65歳以上の被験者では暗室内で20分以上待たせておいても瞳孔が充分に散大しない場合がある(注2)。カメラの撮影光量は40歳代、50歳代の被験者を撮影する場合よりやや多めにするほうがよい。また、散瞳しにくい場合は、状況に応じて片目に散瞳剤を点眼して撮影するか、もしくは眼科医の精密眼底検査を受けるようにすすめる。
 なお、散瞳剤点眼時の注意事項は散瞳剤カメラの場合と同様である。

撮影したフィルムの整理法

 前項3の方法で両眼撮影をおこなった場合、同一被験者の左右眼の写真が、1本のフィルムの中ではなれた場所に写しこまれることになる。したがってカラーフィルム(スライド用)は1枚ずつ切りはなしてスライド枠に入れ(現像所でスライド枠に入れて返送してもらうとよい)、各人の左右眼を一緒にして並べて、スライド枠に被験者番号(氏名)、左右眼の別、スライドの上下、裏表の表示を記入し、眼底判定記録表の番号順に整理して、眼底所見判定の担当者にまわす。

眼底写真の判定法

 従来の集検用カメラ(散瞳型、画角30度)にくらべて無散瞳型カメラは広角(画角45度)であるため、フィルム上での撮影倍率は前者にくらべてやや低い。写真判定にあたっては、スライド映写機で10倍(直径約22cm)程度に拡大し観察するのが適当である。この場合、壁面に貼った白紙上に直接投影するのが(10倍拡大した像を60〜70cmの距離で観察する)詳細な所見を観察するのにもっともよい。

 


 

【注1】 (戻る)

 無散瞳型眼底カメラ(画角45度)による両眼の眼底撮影によれば、両眼を直像鏡で検査(精密眼底検査)して診断された眼底異常者(Scheie分類の高血圧性所見もしくは硬化性所見のいずれか一方もしくは両方が2度以上)の約74%が発見可能であった。これに対して片眼のみの撮影では眼底異常者の約59パーセントが発見されるにとどまった。

【注2】 (戻る)

 充分に習熟した撮影者が、1日実働6時間、約100名を両眼撮影した場合、集団検診における無散瞳撮影の成功率は95%程度である(40〜64歳の集団で、少なくとも片眼の写真が判定しうる者を成功とした)。
 撮影成功率は被験者の年齢に大きく影響され、とくに65歳以上では散瞳不良や白内障の存在などによって、成功率が60パーセントに低下する場合もあることをあらかじめ考慮しておく必要がある。

【付記】

 眼底検査(眼底カメラおよび直像鏡検査)によれば、血圧に関する眼底病変のほかに糖尿病などの全身病による眼底変化や各種の眼疾患(眼底病)も同時に発見されるので、検診の実施にあたっては眼科医の協力をうる態勢をつくることが望ましい。

 

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